モニターの「パネルの種類」どう違うの?TNパネル・VAパネル・IPSパネル それぞれの違いを長所・短所と共に徹底解説!

こんにちは!Pixioスタッフの池水です。
今日は自分に合ったモニターを選ぶ際に大事な「パネルの種類と選び方」について、基本的なところから詳しくお話したいと思います。

液晶パネルってどんな構造になっているの?

液晶パネルが光る構造

モニターの実際に映像などの画面表示を行っている部分を「パネル」と呼びます。

液晶パネルは、さまざまな役割を持ったフィルムや板などから形成されていまして、高度な技術がふんだんに詰め込まれた技術の結晶のような部品なのですが、製品化されてから既に20年以上経過しており、たくさんの技術進歩を経て現在に至っています。

最初は黒一色しか映せない液晶ディスプレイだったのが、Red、Green、Blueの三色でさまざまな色を表現できるようになり、PC用液晶ディスプレイや液晶テレビに活用されるようになりました。
これは、液晶素子に赤(Red)、緑(Green)、青(Blue)のフィルターをつけることによって色がつくというわけです。そして、3色の組み合わせによって、さまざまな色を表現することができるようになります。(緑+赤=黄色、赤+青=ピンクなど)この赤・青・緑をすべて足すと、最終的には白色になります。
この色をフルHDなら約207万個、4K2Kなら約829万個の液晶画素が組み合わさって1つの映像を作り出しています。

しかし、ここで色を作り出してもキレイには見えず真っ暗な状態です。
そこで、バックライトからライトを当てて透過させて色を見えるようにします。昔はCCFL(Cold Cathode Fluorescent Lamp)という冷陰極管を使用していたのですが、近年はLEDライトを使用しています。

液晶パネルの構造

さらにいくつか技術革新を経て現在に至るのですが、「そもそも液晶パネルってどんな構造になっているの?」にお答えします。
以下の図をご覧ください。

この図は、液晶パネルの断面のようなイメージ図なのですが、細かい部分は割愛し、分かりやすくするために必要な部分のみを記載しています。

LEDバックライトの光が左→右に流れて、右側の人が見れるようになっている図となります。
現在のPC用液晶ディスプレイは、上部に設置してあるLEDライトが下に向かって光っているのですが、そのままだと懐中電灯でガラスを照らすと光が全部抜けていくように、正面から見ても何が映っているのかほぼ何も分からないという状態になります。
そのため、拡散フィルターという半透明のフィルターを入れて光を全体に行き渡らせているのですが、障子の紙に懐中電灯を当てる映像をイメージしてみてください。光が全体に柔らかく広がっていきますよね?その障子の紙の役割を果たしているのが拡散フィルターというわけです。

この構造を持った液晶ディスプレイのことをTFT液晶ディスプレイと呼んでいます。
そして、TFT液晶ディスプレイの中には、TN方式、VA方式、IPS方式などの種類がありまして、それぞれメリット・デメリットがあります。

液晶パネルの種類

TFT液晶ディスプレイの中には、TN方式、VA方式、IPS方式の3種類があります。 順番に長所・短所を見ていきましょう。

TNパネルの特徴

TNパネル(Twisted Nematic)は、その名の通り90度にねじれている構造で、液晶分子に電圧を通すと液晶分子がまっすぐ垂直になり、偏光フィルターを通過できるようになります。

電圧OFFの時は白、最大電圧にすると黒になるのですが、構造上隙間から光が漏れ出てしまうため、完全な黒を表現できず、部屋の電気を消してTN液晶ディスプレイの電気をONにすると、「バックライトが光っているな」と隙間からの光が漏れ出ているのが分かります。
完全な黒を再現できないため、映画など各場面の映像によっては迫力不足を感じることもあります。

長所

TNパネルは、VAパネルやIPSパネルと比較して応答速度がもっとも速いです。そのため、2019年以前までのゲーミング液晶ディスプレイはTNパネルが主流となっていました。
さらに、製造コストが他パネルに比べて安いという長所がありますが、近年のIPSパネル採用競争の影響により、以前ほどTNパネルとIPSパネルとの間の価格差がなくなりつつあり、製造コストが安いという長所は消えつつあります。



短所

電圧OFFの時は白、最大電圧にすると黒になるのですが、構造上隙間から光が漏れ出てしまうため、完全な黒を表現できず、部屋の電気を消してTN液晶ディスプレイの電気をONにすると、「バックライトが光っているな」と隙間からの光が漏れ出ているのが分かります。
完全な黒を再現できないため、映画など各場面の映像によっては迫力不足を感じることもあります。

また、この3種類の中で視野角がもっとも狭いことが挙げられます。公表数値では上下160/-160度、左右170/-170度となっており、この角度内でも途中から色の変化を感じ始めます。

VAパネルの特徴

VAパネル(Vertical Alignment)は、その名の通り垂直に液晶分子が垂直になっており、電圧OFFの時は黒、最大電圧にすると白になります。

長所

上記の通り、バックライトの光が漏れ出るようなことがないため、完全な黒を再現できるのが最大の強みで、その分コントラスト比を大きく高めることが可能となります。
部屋の電気を消してVA液晶ディスプレイの電源をONにして真っ黒な映像を映すと、本当に真っ暗です。そのため、昔から液晶テレビで採用されるケースが多いです。
映像美を見せたい用途の液晶ディスプレイはVAパネルを採用する傾向にあり、特に大型サイズや高解像度の液晶ディスプレイに採用されるケースが多い傾向です。


欠点として、TNパネル同様に周辺輝度や色変化が低下しやすい構造になっています。ただし、公表数値では上下左右178/-178度となっており、真正面から見ることが多いのであれば、あまり気にならないだろうと言えます。
ちなみに、筆者はVAパネルが一番好きです。基本的に一人で使うので、正面からしか見ることがなく、欠点は欠点としてあまり感じていません。むしろ、完全な黒を再現できてコントラスト比が高い映像美を楽しめています。

また、1500Rや1000Rなどの曲面比率を持つ曲面ディスプレイは、現在の技術では構造上VAパネルしか製造できないようです。 将来的には曲面ディスプレイのTNやIPSパネルが出てくるかもしれませんね。

短所

VAパネルの欠点として、この3種類のパネルの中では応答速度がもっとも遅いことが挙げられます。

しかし、近年では応答速度の欠点を克服したFast VAパネルというものも市場に流通するようになり、以前ほどの短所は消えつつあります。

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IPSパネルの特徴

IPSパネル(In-Plane Switching)は、水平になっている液晶分子を横方向に回転させてことでバックライトの光量を調整しています。

長所

液晶分子を垂直方向に傾けない分、視野角の低下が起きにくく、周辺輝度や色変化の低下が少なく製造できるのが大きな長所と言えます。

現在はIPSパネルの人気が最も高いため、IPSパネルの技術革新がものすごい勢いで進んでいます。既にIPSパネルのシェアがTNパネルを超えており、今やIPSパネルが主流となりました。その影響もあり、各パネルメーカーの競争が激しくなり、技術競争と価格競争が起き、今や製造コストが高い欠点はほぼなくなりました。

さらに、欠点であった応答速度の低下はどんどん改善されていき、遂に応答速度1ms(GtG)というTNパネルとほぼ同等レベルのFast IPSというパネルが登場しました。

また、映像美を重視したNano IPSというパネルも誕生しており、色域が従来のIPSパネルよりも広く、さらに応答速度も従来のIPSパネルより速いため、映像美を求めるゲーミング液晶ディスプレイで採用されるケースが増えてきていますね。

短所

IPSパネルは構造上、完全な黒を再現できません。
そのためTNパネル同様に部屋の電気を消してIPS液晶ディスプレイの電気をONにすると、「ライトが光っているな」と隙間からの光が漏れ出ているのが分かってしまいます。

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量子ドット(Quantum Dot)パネルの特徴

最後に、量子ドットという新技術を用いたパネルのご紹介もしておきたいと思います。
「QD」「QLED」とも表記されるタイプのパネルなのですが、通常の液晶パネルと組み合わせて用いる量子ドットいうまったく新しいタイプの液晶パネルです。

通常の液晶パネルの構造の欠点として、赤・青・緑の各液晶素子に光を当てて色を作り出すのですが、不要な色は光を遮断して色を作り出しています。そのため、LEDライトの光を100%活かしきれている訳ではなく、大きなロスが発生してしまいます。

量子ドットの場合、赤・青・緑と言うような各色が決まっている訳ではなく、「光の強さで量子ドットの大きさが変わり、色が変わる」性質を持っています。LEDライトと液晶パネルの間に量子ドット素材のシートをセットし、青色のLEDライトをONにして光を当てると、ナノサイズの粒子に光が吸収され、再結合を行うことで色が変わるという構造になっています。そして、この量子ドットの粒子の大きさが異なることで、細かな色を表現できるようになっています。

長所

従来の液晶パネルよりもLEDバックライトののロスが少なくなり、より効率的な運用が可能となりました。

例えば、青色は1.0umの大きさ、黄色は2.0umの大きさ、赤色は3.0umの大きさになることで、各色を作り出し、1つの映像を作り上げています。そのため、通常の液晶ディスプレイでは出せない細かな色を表現することができるようになり、高色域で表示することが可能となりました。

短所

現在のところ、通常の液晶パネルよりも製造コストが高くなるため、ハイエンドモデルでの採用が主流となっています。また、採用モデルがまだ多くはないため、一般的な認知度が拡まっていないのが現状です。

液晶ディスプレイ以外のディスプレイ

現在の映像機器の市場では、液晶ディスプレイが市場をほぼ席捲している状態ですが、最近では有機ELパネルが徐々に成長してきています。

有機ELパネル

有機ELディスプレイ(Organic electro-luminescence)とは、ホタルやヒカリゴケのように熱を出さずに自ら発光する有機化合物を用いたディスプレイのことを指します。
1番のポイントは、画素単位で自ら光ったり消したりできるので、バックライトが必要ないことです。
画素ごとに明るさを調整できるため、明暗差のある映像でもしっかりと表現することができるようになり、また応答速度をものすごく速くすることができるようにもなりました。

また、LEDのバックライトが不要になったことにより、非常に薄く製造できるようになったことも長所をとして挙げられます。

さらに、色域を非常に広くできるため、驚くような映像美が楽しめます。最近では4Kテレビで採用が加速しており、PC用液晶ディスプレイでも27インチや31.5インチで採用が増え始めていますね。

なお、有機ELのことをOLED(Organic Light Emitting Diode)と呼ぶこともあり、業界の間では国を問わずオレッド、オレイドと呼んでいます。OLEDも有機ELも同じことを指していると思って問題ありません。
Pixioでも有機ELディスプレイの販売をスタートしました。


LEDディスプレイ

また、LEDディスプレイという新しい製品も誕生してきています。
LEDディスプレイとは、1画素1LEDライトになっており、1画素ずつライトの色を変えたりON/OFFできるため、応答速度が非常に速くできるのが特徴です。
今までは1画素1cm以上の大きさのものが大半であったため、何百インチとあるような街の広告用ディスプレイとしてしか採用されなかったのですが、最近では1mmを下回る200nmというマイクロLEDというものまで出てきています。

電気のON/OFFで映像描写を行うため、応答速度が非常に速くできるのが特徴です。非常に応答速度が速く、究極の映像美が楽しめる超色域を持っているのが長所となっています。/p>

ただし、製造コストが驚くほど高いということと、画素数の分だけLEDライトがあるので電気代が高くなってしまい、さらに熱を放出するので近くにいると暑いという欠点があります。そのうち、技術革新で製造コストもカットできるようになれば、将来的に各家庭で楽しめるLEDディスプレイが普及するようになるかもしれませんね。

ミニLEDディスプレイ

有機ELとマイクロLEDディスプレイのちょうど中間のようなミニLED液晶ディスプレイというディスプレイも登場しました。これは液晶ディスプレイのバックライトに特徴がありまして、従来の液晶ディスプレイは上部だけに横1列でLEDライトが数十個ついて映していたのですが、コストを抑えることができる反面、画面を局所ごとに明るくしたり暗くしたりするのが難しく、なかなか思う様な映像にできませんでした。
そこで、ミニLED液晶ディスプレイの登場です。

通常の液晶ディスプレイのように上部だけではなく、画面全体にLEDライトを配置することにより、画面の明るさ/色ムラを抑えることができ、また局所ごとに明るくしたり暗くしたりすることができるようになりました。

そのため、この写真のような朝日の極端に明るい場所と、建物の陰になっている極端に暗い部分の両方をしっかりと明るく/暗く表示できるのが、ミニLED液晶ディスプレイの最大の長所となります。

まとめ

今回はパネルの種類による違いについて簡単に解説させていただきました!

要約すると、大まかには以下のように分けられます。

・スピード重視のゲーミングディスプレイ
Fast IPS、有機EL、マイクロLED、ミニLED

・映像美重視のゲーミングディスプレイ
VA、FastVA、IPS、Nano IPS、量子ドット、有機EL、マイクロLED、ミニLED

今後、さらなる技術の進歩により、今では想像もできないようなディスプレイが登場するかもしれませんね!映像技術の進歩は本当にとんでもないスピードで進化しています。

もしわからないことなどがあれば、お気軽にコメント欄にて質問してください。
では次の記事でお会いしましょう!